トロント(カナダ)在住20年の筆者が、カナダ国内旅行やトロント市内を中心としたイベントで撮影した写真で綴るブログです。
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2015年3月20日金曜日

エアカナダのプロペラ機で行く、オンタリオ州「ちょい旅」



日本では「若者の旅離れ」が深刻だと言われています。たまに帰国すると、私の目には、週末のテレビ番組は旅番組だらけ。書店の雑誌コーナーには旅の情報誌が溢れているように見えるのが不思議に思えます。情報だけ見て満足してしまい、意外に旅には結びつかないということなのでしょうか。そこで、トロントに住んでいるというシチュエーションで、どんな旅の選択肢があるのかを考えてみました。

カナダの旅のパターンは?

まずは、経済性を重視したクルマでの移動。トロントから最も近い観光名所「ナイアガラの滝」は、1時間ちょっと。世界的にも有名な場所なのに、トロントに住む我々にとってすでに旅ではなくなっているほど近い存在です。

世界フィギュア大会で一躍日本に知られることになったロンドン(オンタリオ州)も、ドライブで行く旅の範囲でしょう。かつては足しげく通っていた時期があり、お気に入りのレストランが数軒あって妻を連れてちょっとドライブと出かけたものですが、最近はご無沙汰になってしまいました。街自体がコンパクトでVIA鉄道の駅が市内中心部にあるため、鉄道で行くと違った趣を楽しむことができます。

少し足をのばしてオタワやキングストン、モントリオールなど近郊都市への旅となると、ユニオン駅からVIA鉄道「コリドー」が選択肢になります。時間に余裕がある時など、カナダの雄大な大地を走る情緒豊かなVIA鉄道は良い選択肢だと思います。

さらに距離をのばすと、飛行機+レンタカー。なにしろ国土の広さは世界有数ときていますから、踏み込んだカナダ旅をはどうしてもこの組み合わせでの移動になります。昨年のロッキー旅はその典型でした。


カナダ旅の究極2パターン

究極はなんだろう? と考えてみると、まず思い浮かべるのが3年前のバンクーバーからトロントへ向かう大陸横断鉄道「カナディアン号」の旅。経験すると、これはもう、カナダ旅の中でも別格。西海岸の港町バンクーバーを出発し、ロッキーを越え、カナダの大平原をひたすら走る列車の旅は、スケールの大きさと、時間の長さと、人の出会いと、食堂車と、ラウンジカーと、ネットすらつながらない不自由感と、初めて会う旅行者達との英会話と、カナダをまるごと味わえる一度は経験しておきたい上級者向け豪華旅です。

もう一つの究極は、今から10年ほど前にミニバンに家族4人と荷物を乗っけて走りに走った「カナダ東部一周の旅」。10日間で約2,000キロ。トロント→モントリオール→ケベックシティ→モンクトン→PEI→ペルセ→ガスペ→ケベックシティ→モントリオール→トロントと、今書いているだけで気の遠くなるような旅でした。楽しい思い出ばかりですが、難点があるとすれば運転。私の家族の場合運転できるのは私だけ。10年前だからできた「一生に一度の旅」でした。


今回は「ちょい旅」へ

前置きが長くなってしまいましたが、今回の本題は昨年の秋の経験について。旅のきっかけは、ふとしたことで興味のあるテーマが浮かび、どうせなら、1泊2日でもいいから行ってこの目で見てみたい、と「ちょい旅」を決心。「ちょい旅」とは「思い立ったら吉日」「旅は一期一会」を重視。スケジュールを盛り沢山にせず、きっかけとタイミングを大事にしてテーマをしぼり、1点重視の欲張らない旅、という意味です。

私自身数年前まで、旅というのは訪れる場所は一生に一度だから、あれこれと観光名所を詰め込んで思い出を作ろうという考えでした。そうした気分が最近ちょっとずつ変化しているように感じます。普段からカナダと日本を行き来している違った暮らしをしているからなのか、日本もカナダもどちらも海外で国内という不思議な環境から来るものなのか、もう少し気軽な気分で二つの国で旅を楽しめないかと、最近特に思います。フリーランスというかなり自由なスタイルで仕事をしていることも、大きな要因です。

そんな考えもあり、週明けには日程を調整してネットで往復チケットと宿を予約し、週末に出発することにしました。




プロペラ機に乗る

フラッグシップ・キャリア(国の代表的航空会社)として主要都市をカバーするエア・カナダは、特に地方路線になると厳冬期の気候も加わり営業面でもなかなか大変。コスト削減のため、日本で言うLCCに似た「Express」ブランドでハブ空港と小都市を小型プロペラ機で結んでいます。過去にも数度経験した、カルガリーやエドモントン、ホワイトホース空港までジェット機で行き、乗り換えてさらに奥地へと飛んでゆく時に決まって登場するスタイルは、私にとって懐かしい光景です。



今回の行き先は、「Sault Ste Marie(スー・セント・マリー)」。アメリカと国境を隣接する五大湖畔にある歴史のある地方都市で、カナダならではの水上飛行機を見るというのが、目的です。

トロントからの飛行距離は約500キロ、時間にして約1時間半という、日本往復と比べるとまさに「ちょい旅」。1泊2日という超短の取材旅のため、経済的で効率の良い朝早い便を選び、帰りは翌日夕方出発というスケジュールを組みます。




ゆるい機内の楽しみは?

出発ロビーは、ピアソン国際空港ターミナル1の国内線の端っこにある1階の発着場。自動ドアが開くと目の前に飛行機が待っていて、徒歩でタラップを上がり機内に乗り込む、カナダの地方空港で良く出会うスタイルです。



荷物は機内に持ち込めるギリギリサイズのカメラバッグと、小振りなショルダーを一つ。ひとり旅、しかも1泊2日なので着替え等身の回りのものは控えめ。カメラ3台、レンズ5本、パソコン、小型HD、ワイヤレスモデムや資料など機材の点数は多くなりますが、全部持ち込みにして行動を身軽にできます。



乗り込んだのは、カナダ国産機ボンバルディエ社製Dash 8-100(DH1)。



横が2−2で縦が10列37人乗りと、大変コンパクトな機体です。タラップの手前には大降りな荷物を置く棚があり、地上係員が手で機内にしまってくれて、降りるときはその逆。ちょっと「Do-It-Yourself」みたいで楽しいですね。





カメラバッグを座席の下、ショルダーは座席上の棚にしまいます。この手の機体は収納が小さくドキドキですが、DH1は座ってみると足下が割に余裕がありました。



人数が少なかったこともあり、機内はのんびりムード。乗務員は機長が1名、キャビンアテンダントが1名の合計2名。乗客も10名そこそこで、言い方が適切かどうかはわかりませんが、人気のない「乗り合いバス」のようなカジュアルな空気が漂います。

私がカナダに長く住んでいるためか、このシチュエーションでは「飲み物は」とか「サービスは」といったことは気にならず、ぽかぽかと暖房が効いている機内でシートベルトを締め、ゆらりと離陸した後はすぐ眠りに落ちてしまいました。


心地よく放っておかれる快感

トロント〜日本直行便は約12時間。地球を半周する感じの長旅は、年齢を重ねるにつれタイヘンです。何度かビジネスクラスに乗る機会がありましたが、珍しさが勝って食べたり飲んだりの大騒ぎは初回だけ。回数を重ねるにつれ、「のんびり横になって寝る自由」がこのクラスの旅の満足と醍醐味と心得ます。キャビンアテンダントの皆さんは、私のそういった行動を決してじゃますることはありません。エコノミー席だと食事時に起こされたりしますが、夜中に目が覚めラップトップを開くとそっと寄って来て「お水でもいかがですか?」と声をかけてくれるくらいの「少ないサービス感」が心地良いのです。

たかだか1時間半のプロペラ機とロングホールのビジネス席のサービスが同じ、と言うつもりはありませんが、「心地よく放っておかれる気分」としては似ているものがあります。



最新鋭B787ドリームライナーのジェット・エンジン音はスマートで、機内装備はいかにも「最先端」という気持良さがあります。対極にあるプロペラ機に乗るとターボ・プロップ・エンジンのメカニカルでレトロな音は耳に心地よく、趣(おもむき)を感じます。飛行機や鉄道、レンタカーなどを利用する機会が比較的多いかなと思う私にとって、目的地に着くためにだけにこれらがあるのだとするとちょっと寂しい気がするのですが、皆さんはどうお感じになりますか?


エア&レンタカー

1時間半ほどのフライトは終わり、着陸後は荷物を持って徒歩で空港の建物に入ると、忘れていたレンタカーの予約をカウンターで済ませて目的地へ出発。



行き先をiPhoneのGoogle Mapに入れ、だいたいの見当をつけながらドライブをするというスタイルは、気ままな一人旅ならではの醍醐味です。


果たして取材の成果は?

取材旅といっても今回は依頼仕事ではなく自分のテーマに沿った旅でしたから、事前にメールで連絡を取った一人に会いに行くのが目的。結果はその方の人脈で、まったく見ず知らずの私に対して次々と皆さん助け舟を出していただいて、ずいぶん沢山の方々とお目にかかり、予想以上に面白い話を伺う事ができたのはサプライズでした。今回の経験は、きっと将来何かに生かされることでしょう。



旅の目的は十分以上に果たされたので、ホテルをチェックアウトしたあとお世話になった方に挨拶をして早めに帰路につくことにします。空港の待ち合い室は閑散としていて、次々とひとり乗りの小型機が夕方の滑走路に現れては厚い雲の中に消えて行く、という光景を何気なく見て時間を過ごします。



この空港にはパイロットの養成学校が併設されていて、おそらく夕暮れの飛行訓練に向かう時間帯だったのでしょう。カナダ空軍が誇るスノー・バードを連想させる赤と白のツートンが映える可愛らしい練習機の操縦席に座っている、お揃いのジャケットとヘルメットに身を包んだ若い訓練生の姿が印象的でした。彼らはいつの日にか、この大空を自在に飛び回るパイロットとして活躍するのでしょう。

「何もない時間」ぼんやり窓際にほおづえをつきながら外を見るのも、楽しみです。


旅のまとめ




今回の「ちょい旅」、振り返れば行きと帰りも含め飛行機にどっぷり浸かった1泊2日になりました。トロントからやって来た同じプロペラ機に乗り、ゆらりと離陸した途端に眠りに落ちると熟睡したままトロント国際空港に到着。駐車していた自分のクルマに乗って帰宅したのは、夜9時頃。洗濯機に洋服を放り込み、シャワーを浴びて一日を終えます。

カナダ暮らしは長くなっていますが、知らない場所はたくさんあります。たまには重い腰を上げて「ちょい旅」をやってみたいな、と思っています。

気になる旅の決算。飛行機代をたまったエアマイルでまかない、キャッシュで払ったのはレンタカー+ガソリン代+食事代+ホテル代。ホテルは寝るだけなので格安($60ドル程の素泊まり宿)、食事はバーガー的なファストフードで済ませたので、総額$300程。この位なら、今年はまたどこかに出かけられそうです。