トロント(カナダ)在住20年の筆者が、カナダ国内旅行やトロント市内を中心としたイベントで撮影した写真で綴るブログです。
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2015年2月24日火曜日

自習カナダ史第5話:人類の「ラストフロンティア」への旅の話

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アフリカ大陸を出発した人類の旅は、「ラスト・フロンティア」と呼ばれたアメリカ大陸が終着点。

彼らはいつ渡って来たのか? 先祖は誰だったのか? 

前回、人類が内陸のユーコン準州を通って北米大陸を南下したという説をご紹介しました。1960年代に行われた氷河期の研究に基づいて導き出された仮説はその後、時代をさらに遡って人類が北米で生活していたという事実が発見されると、新たなストーリーが生み出されます。

1976年に発見された、ユーコン準州北西部のBluefish川沿いに2つの露出した岩肌にある洞窟「Bluefish Caves」。一次調査では、人間の手による細工がされた痕跡と見られる特徴があるマンモスの骨や、表面を磨いたと見られる磨製石器が発見されたことで大きく注目されました。ここには、前回もお話ししたクローヴィス文化の特徴を持つ石器時代の人類がいたことは確かなことです。

出土したものの年代を科学的な方法で調べると、紀元前2万年前、あるいはさらに1万年は古いかもしれないという結果が出てきます。これまで紀元前1万年前に南米地域に広まっていたクローヴィス文化が北米最初の人類の痕跡を残すものであるという説を前提に考えると、年代的にここは「古すぎる」という疑問が生まれます。

クローヴィス文化よりさらに1万年以上前に北米大陸に人類が存在していたという「新たな証拠となる可能性」として、さらに「Bluefish Caves」の詳細な研究が必要となり、学会の定説が変わる日が近いのではないかと考えられるようになります。

発掘調査の概要について、専門的なレポートはカナダの人類博物館のウエブサイトにありますが専門的すぎるので、興味のある方には下記の文書が素人の我々にも比較的読みやすく、まとまっているものとしておすすめです(英文)。
http://www.tc.gov.yk.ca/publications/Blue_Fish_Caves_2008.pdf

クローヴィス文化がメキシコ半島で発見されたのは、1920年代のこと。それ以来北米南部を中心に「Bluefish Caves」以外にも古い遺跡が新たに発見され、定説よりさらに時代を遡った北米人類の存在可能性が高いことがわかってきています。

これまで氷河で行き先を阻まれ、氷河が溶け始め無氷回廊ができるまではアラスカで身動きできなかったと思われていた人類は、内陸以外に南下のルートを見つけ出していたということになります。

19世紀中頃に基本的な理論ができあがった氷河期の仕組み。研究が進むと、最終氷期と呼ばれる時代と、その後の現代に続く地球の様子が詳しくわかってきました。

巨大なコルディエラ氷床が解けると、膨大な量の氷河水は氷河湖となり、たびたび巨大な洪水を引き起こし(氷河湖決壊洪水)、ついには西はマッケンジー川を伝って北極海へ、東はセントローレンス川を通り大西洋へと流れ込みます。氷河水は世界中の海面を120メートルも押し上げ、現在の水位を作り出したことがわかると、現在は見ることができない海底に、人類移動の証拠が残されているのではないかと考えるようになります。

無氷回廊を通った人類より早い段階で移動をするためには、太平洋沿いの「徒歩での」ルートを考える以外にありません。当時の海岸沿いは、氷河が溶け大量水が流れ込んだことにより海面が上昇し、水没してしまいました。証拠の発見には困難が伴いますが、徐々に痕跡が見つかり始まっているのも事実です。

現在では、北米大陸を南下した人類は、ユーコン準州の無氷回廊に代表される内陸ルートと、ブリティッシュコロンビア州の海岸沿いという、2つのルートを通っていたと考えられています。

さらにDNAでの調査も進んでいます。「Paleo-Indian」と呼ばれる北米先住民の祖先は、シベリアを通ってやってきた東アジア人及び西ユーラシア大陸人であったということが突き止められています。さらに彼らのDNA分布パターンを調べて行くと、最初に西側に入りそこから東へと移動していった痕跡が残されていることがわかってきました。

先住民はどこから、どうやって北米へと入ってきたのか。この問いの答えを出すために、何度も発掘調査が行われ、様々な種類の調査や検査が行われ、事実を積み上げ、確認された事実を元にして仮説を立て、さらに広い視野で仮説に修正を加えてゆくという時間とお金がたくさんかかる作業が、今も続いています。

新たな発見がある度に新しい学説が発表され、今なお活発に議論が行われている話題であるがためにロマンがある、とも言えるでしょうか。

今日のために選んだ写真は、バンクーバー国際空港からユーコン準州のホワイトホース空港へ向かう途中、ロッキー山脈を真下に見る飛行機の中から撮った一枚。カナダには、大自然と人類が織りなす雄大なストーリーが、たくさんあります。

さて、次回はいよいよ北米で活動を始めた先住民の時代について考えてみます。