トロント(カナダ)在住20年の筆者が、カナダ国内旅行やトロント市内を中心としたイベントで撮影した写真で綴るブログです。
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2014年5月11日日曜日

間もなく就航、トロント発〜羽田行き787ドリームライナー


旅のカタチはさまざま。徒歩の旅、クルマの旅、列車の旅、船の旅そして旅客機の旅。ボーイング787(ドリームライナー)がエアカナダに就航するまであとわずか。密かに盛り上がる話題の新型機体については見る角度はさまざまですが、私なりに少しだけ調べてみました。

アメリカにある世界最大の航空宇宙機器開発会社として世界に名前をとどろかせる、ボーイング社。設立者はデトロイト生まれのウィリアム・E・ボーイング氏。彼はもともと材木会社を経営していた社長で、1909年にシアトル旅行の際に初めて飛行機を見て、1916年に「パシフィック・エアロ・プロダクツ(Pacific Aero Products)」社を設立し、後のボーイング社の礎をつくります。皮肉にもボーイング社は、第一次世界大戦、第二次世界大戦と2度の大戦で爆撃機の製造で確固たる地位を築きあげることになります。ライト兄弟が初めて有人動力飛行に成功したのは1903年のこと。彼が最初に見た飛行機は、旅客機の歴史の創成期にあったものでした。

ちなみにカナダと日本を直行便で結ぶエア・カナダは1937年、カナディアン・ナショナル鉄道の子会社として営業を開始。シアトルとバンクーバー間を結ぶ世界初の航空国際郵便を就航させ、その後国内第2位のカナディアン航空を買収、2003年には破産を経験して現在に至ります。現在の主力機はボーイング737、777そして787です。

ボーイング社が航空業界に寄与した最大の功績は、当初主流だったプロペラ機(レシプロエンジン)から、ジェットエンジンへと見事な転換を果たしてジェット旅客機発展の扉を開いたことです。民間航空機として、第一世代のジェット旅客機であるボーイング707を世に出し長距離国際便が始まると、人々を外洋へと運ぶ主役は客船から航空機へと取って代わられます。

707の初就航は、1955年。当時全盛を誇ったパン・アメリカン航空(パンナム)の後押しもあり、ジェット旅客機の販売に成功したボーイング社は、1963年には中距離型ジェット旅客機727を、また小型短距離型737を1967年に就航させ、本格的なジェット旅客機時代の担い手となります。立て続けに新型機を発表したボーイング社は、1969年にはついにジャンボジェットの愛称で親しまれた最大550人を運ぶことができる巨大な客室を持つ2階建ての747を就航。高嶺の花であった海外旅行は一般市民にもなんとか手が届くようになり、一気に増えた座席を埋めるため旅行代理店による海外旅行の低価格化競争の火付け役となりました。

1959年に始まったTBSの「兼高かおる世界の旅(1959年〜1990年放送)」の冒頭で、パンナムのジャンボジェットが飛ぶ立つ映像は、当時子供だった時代に見た記憶が今でも残っています。南アメリカ、ヨーロッパやアジア太平洋路線に特化したパンナムは1991年に破産。ボーイングの大型ジェット導入による低価格競争に敗れたものの、ジャンボジェットによる旅行を世界に広めたのもまたパンナムの功績であったことが歴史の皮肉なところです。

日本が海外旅行へ一気に目を向けたのは、この時期に始まった「ジャルパック」を抜きには語ることはできないでしょう。高度経済成長を遂げた1965年の前年には新幹線が開業、東京オリンピックが開催され、海外への渡航者は約12万人を記録しました。ジャンボジェットが就航した1969年には日本航空と提携して海外旅行ブームを作り出したことで、10年後の1974年になると渡航者は230万人と20倍に激増。

順調に見えた航空業界に、この後受難の時代が訪れます。まず第一は1973年と1979年に起こった2度のオイルショック。航空機の開発は燃費効率の良い機体へと重点がかけられるようになり、757(1982年)、767(1981年)に就航した新型機は共にエンジン2基の中型機。ナローボディと言われる通路が中央の1本のみの機体でした。

下のリストで737の機体製造が8,000機に迫るのには、事情があります。1967年に始まった第一世代737-100/200、1984年には第二世代-300/400/500、1997年に生産が始まった第三世代の-600/700/800と次々に改良が加えられ、燃費を大幅に向上させ航続距離を伸ばし、777でも使われるハイテク・コックピットの採用等安全性の充実も計られました。
737はボーイングの誇るベストセラー小型ジェットとして現在も第四世代の開発が行われていますが、もう一つのナローボディの中型ジェット機757は2005年にすでに生産を終了。後継機が作られなかったのは、現在も改良が続く737に実質的に吸収されたことによります。また、ワイドボディーの777ですが、これも改良が加えられながら就航から20年がたった今も主力機として生産が続けられています。



707 就航:1958年/生産:1,010機(大型機:最大179席)
717 就航:1999年/生産:156機(ナローボディ小型機:最大117席)
727 就航:1964年/生産:1,832機(最大189席)
737 就航:1968年/生産:7,980機(ナローボディ:最大201席)
747 就航:1970年/生産:1,486機(ワイドボディ超大型機:最大505席)
757 就航:1983年/生産:1,050機(ナローボディ:最大239席)
767 就航:1982年/生産:1,061機(セミワイドボディ:最大409席)
777 就航:1995年/生産:1,188機(ワイドボディ:最大418席)
787 就航:2011年(ワイドボディ中型機:最大250席)

1990年になると海外へ向う渡航者は1,000万人の大台に乗り、その10年後には1,700万人を記録。オイルショックを切り抜け、さらに発展を続ける航空業界を襲ったさらに大きな受難は2001年に始まります。この年の9月に起きた米国同時多発テロ、2年後の2003年にはSARS、イラク戦争は旅行業界に大打撃を与え、多くの中小業者が倒産し、トロントでも旅行ガイドを生業としていた経験豊富な人々の多くが転職あるいはこの地を去るのを目撃してきました。渡航者は1,300万人と激減。その後持ち直して2012年にはさらに1,800万人を越える海外渡航者を記録したものの、ジェット旅客機はより高い安全性、燃費効率、経済性というさらに厳しい要求にさらされることになります。
JTB総合研究所:http://www.tourism.jp/statistics/outbound/

機内の居住性への乗客の要望に応えるためにパンナムが初めて導入したビジネスクラスは、ファーストクラスへと発展し、1996年になるとシートがベッドのようにフルフラットになる座席も登場。空港での特別なラウンジ、優先搭乗、豪華な食事なども含めた付加価値の高いサービスが提供されるようになります。一方で、オイルの高騰のために燃油費を別に徴収するという事態も発生しました。

海外旅行者は年々増加する一方、数年おきに行われていたボーイング社の新機体開発の間隔は767以降極端に長くなり、777の就航までには13年を要するまでになりました。ジェット旅客機の開発がより複雑なものになり、コストも格段に上がってしまったことに加え、次世代機の方向性をどのように設定するかという問題の解決に手間取るなど、新型機の開発着手にはハードルの高い難問が待ち構えています。

例えば777の場合1機の値段は約150億円。開発費用はその10倍近い、最大1兆2000億円にも上ると言われています。単純計算でも、スタートアップに80機の予約注文(ローンチカスタマー)が入らないと、飛行機の製作を始めることはできないことになります。しかもボーイングにはエアバスというヨーロッパの強力な競争相手にさらされ、過去のように数年置きに新型機を開発・生産などできなくなってしまいました。

そこで考えだされたのが、就航後に実績を積んでいる売れ筋の737や777という航空機を段階的に改良し、長く生産できるようにするという手法。、開発費の高騰という事情の中で市場への航空機の供給を絶やさないという課題への、堅実な回答とも言えます。その流れの中で、顧客となる航空会社により魅力的な旅客機を作るために、顧客の意見を開発段階で聞くようなことも、始まっています。

こうして、777から実に16年の年月を経て完成した787。ドリームライナーと呼ばれ鳴り物入りで登場した次世代型の航空機は、これまで大型機でなければ飛べなかった長い航続距離を実現した中型ジェット旅客機として、満を持して登場したというわけです。

707の初就航から56年。時代はより複雑になり、より小さくなった世界を前にしたボーイング社は、これからのジェット旅客機の方向性を占う次世代機に、数々の先進的な素材とテクノロジーを満載し、燃費性能を高め、航続距離を大型ジェット機並みに伸ばしたジェットエンジンを、ワイドボディの中型機に詰め込むという方向性を出しました。

このボーイング社の方向性に賛同したのが、ANA(66)をはじめとした航空各社。ユナイテッド航空(65)、シンガポール航空(30)、ニュージーランド航空(10)がローンチカスタマーとなり、787-8を最初に大量発注したANAにはすでに最大の27機が納入されています(2014年5月)。


エア・カナダは現在787を37機発注し、7月から新たに運航が始まるトロント〜羽田便に投入されます。
既存の成田直行便の777-300ERが349席+羽田便787-8が251席。トータルで600席(毎日)、18,000席(一カ月)となり、往復便ですからトータル36,000席(一カ月)をトロントに運ぶ能力があることになります。
例えば秋の紅葉シーズンのことを考えると、東部カナダは例年多くの人が訪れる訳で、トロントへ向う直行便が増えるということはカナダ全体の観光としては喜ばしいこと。ハブ空港として(残念ながら)トロントが機能し、ナイアガラ、モントリオール、ケベック、プリンスエドワード島へ多くの観光客を運ぶことができるのは、グッドニュースです。

現在トロント〜成田直行便で使用されている777-300ERの仕様は、下記の通りです。
ワイドボディ機、349席
2クラス(ビジネス+エコノミー)
ビジネス1-2-1(42席)
エコノミー3-3-3(307席)
全長73.9m、全幅64.8m、全高18.5m、客室幅5.87m
座席ピッチ 81.28cm
座席幅 46.99cm
最大航続距離 14,594km
http://www.aircanada.com/jp/shared/jp/common/fleet/pop_fleet77W.html

787-8の仕様は以下の通り。
ワイドボディ機、223席
3クラス(ビジネス+プレミアム・エコノミー+エコノミー)
ビジネス1-2-1(20席)
プレミアム・エコノミー2-3-2(21席)
エコノミー3-3-3(210席)
全長56.7m、全幅60.1m、全高17.0m、客室幅5.49m
座席ピッチ 96.52cm(プレミアム・エコノミー)、78.74cm(エコノミー)
座席幅 49.53cm(プレミアム・エコノミー)、43.94cm(エコノミー)
最大航続距離 15,700km
https://www.aircanada.com/en/about/fleet/788.html


777-300ERと787-8を単純に数字で比較すると、羽田行き787-8はエコノミーの座席ピッチが2.54センチ、座席幅3.05センチそれぞれ短くなっていて、若干コンパクトな座席設計となっています。とは言え、現行の双発(ジェットエンジン2基)ジェットとしては世界最大の777-300ERと中型ジェット旅客機787-8が比較できるところが進化の証とも言えるわけで、コンパクトなボディに効率良く配置されている787-8の高い機能性は特筆すべきものです。(上の写真は787のエコノミー)

炭素繊維を使用しているために、錆を防ぐ必要がなくなり、飛行中の機内の湿度管理が行えるようになったのは朗報。乾燥しきったこれまでのキャビン内環境が、大幅に改善されるとしています。



ジェット旅客機と言えば騒音が・・と言うのはひと昔前の話。成田行き直行便が777になってから、特に私は機内の騒音が気にならなくなり、以前使っていたBOSEのノイズキャンセリング・ヘッドホンQuite Comfort2を持って行くことをしなくなりました。787はジェットエンジンの後ろに「シェブロン(chevrons)」という波のパターンを加えることで静粛性を高めたとしていますが、その効果のほどはどうでしょうか?

実際に座席に座ってみた感覚がどうなのかが、楽しみです。

気になる航空チケット代ですが、特に燃油代が航空代金の大きな重しになっているご時世。実際に羽田行きのチケットを買った感じでは、787のような次世代機を使うことで航空代金が安くなるかというとそうでもなさそうです。ハイシーズンの一番チケットが高い時期、7月1日の羽田行きAC05初便で一番安いタンゴクラスで往復運賃はおおよそ1,800CADくらいだったかと記憶しています。内訳は、航空運賃12万6500円、燃油代5万5100円、サーチャージ7810円です。


今回ちょっとだけ興味がわいた、787-8に新たに設定されたプレミアム・エコノミーを調べてみました。航空運賃が片道で24万6700円とお値段がぐんと上がりますが、座席は足もとはこれまでの成田便より15.24センチ、幅は2.54センチそれぞれ広くなっていて、レイアウトも2-2-2とゆったりとしたキャビン空間となっています。
優先搭乗、おしぼりサービス、ウエルカム・ドリンクをはじめとする飲み物のサービスに加え、食事は陶器のお皿と専用カトラリーで出てくるビジネスクラスと同等のサービスが提供されるとあります。



ビジネスと言えば気になるのが空港で使えるラウンジのサービス。成田では出発ゲートそばのANAラウンジが利用できて、これが大変充実していることは過去にもお伝えしました。羽田の場合も同様で、ずいぶん前のことになりますが、羽田から香港へ向う時に初めて入った国際線ANAラウンジは窓から滑走路が見えて大変ゴージャスだったという記憶があります(写真上:2011年1月)。
あらためて3年前に撮ったこの写真を見ていて気づくのは、JALの747の尾翼のペイントが鶴じゃなくて日の丸ですね。本当に偶然ですが、40年間飛んで来たJALの747が3カ月後に退役する時でした。
羽田は空港全体として食事や買い物のオプションも多いですから、ちょっとだけ早めに行って・・・というようなことも楽しいかもしれません。


楽しいと言えば、前回の日本行きの機内でのこと。もちろんエコノミーです。食前の飲み物を聞かれたので、「コーク&ウィスキー」を注文したら、Canadian Clubのミニボトルにコーラの缶をつけて出してくれました。いつもはJohney Walkerのミニボトルだったのに、この時は気を利かしてくれたのがとっても良かったです。

トロント出発は午後1時で、羽田到着は翌日の午後2時55分ですから、フライト時間は12時間55分と成田便とほぼ同じ。利用者としてのメリットは、日本到着後どこへ向うかということによって変わってきます。都内へのアクセスはもちろん国内便への乗り継ぎも便利になるわけで、羽田便のメリットは機体うんぬんは抜きにしても大きそうです。

都内へのアクセスということでは、成田〜箱崎(T-CAT)が大人片道3,000円で約1時間〜1時間半。羽田からとなると、大人片道820円で約20分〜50分ですから、当然ですがお財布にも優しく、距離も相当近いですね。
http://www.limousinebus.co.jp/area/haneda/tcat.html

手荷物だけならば羽田から京浜急行あるいはモノレールという手段も有効。PASMOなどを持っていれば、切符を買わないでそのまま改札を通り、通勤ラッシュが始まる前に都内の目的地に到着も可能です。
http://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/access/train/route_map.html

現在エアカナダの787初号機は、シアトル北部のエベレットにあるペイン・フィールド空港で3度のテストフライトを終え、5月12日に予定されている引き渡しを待っています。トロント国際空港への初飛行は5月18日で、5月21日にはトロント〜モントリオール間で初就航の予定です。国際線デビューは、7月1日のカナダデーに出発するトロント〜羽田便(AC05)で、日本からは7月2日のトロント便(AC06)がカナダへ向う初飛行となります。



2014年5月中旬現在で予約システムを見ると、11月以降の羽田便はすでにBoeing777-200LRに機体が変更になっていますので、787のアジア便での運用は期間限定のようです。
また5月15日発表で、羽田行きの機体が7月1日から787で飛ぶという当初の予定が変更になったとのこと。787を期待されている方は大変多いと思いますので、定期的に確認が必要です。

エアカナダ特設サイト:http://787.aircanada.com/jp