トロント(カナダ)在住20年の筆者が、カナダ国内旅行やトロント市内を中心としたイベントで撮影した写真で綴るブログです。
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2014年3月29日土曜日

人生初の「初日」について

自分自身のことを聞かれた時に答えを用意していた方が楽なことに気づき、はて? どうしようかと考えていた時期がありました。最近では良く「カメラマンです」と表現することが多いのですが、いわゆる写真家はそれぞれのテーマに沿って芸術的に作品を作り上げて行く方々という印象が強く、私はそういう方向ではないかなと考えたからです。
トロントを日本に紹介する仕事であったり、コンサートやイベントの撮影だったり、食品の撮影であったり様々ですが、スタジオではなく現場でのそれが多く、条件も環境も千差万別。依頼者の都合に合わせて何でも撮るわけですから、やはりカメラマンという言葉が腑に落ちます。カメラをきちんと手にしてからはまだ5年ほどとさほど経験があるわけではありませんが、それでも私が撮るものを好きだといって下さる方もいて、それは大変嬉しいことと感謝しています。

結果的にですが「何でも撮る」というスタイルではあるものの、毎年同じイベントでの撮影をしていると現場での経験は蓄積されて行くので、去年はこう撮ったから今年はこう撮ってみようかな? と考えるようにもなります。趣味で撮っているわけではなく公開されますので、撮影のための工夫やアイディアのようなものは常に頭に入れておくように心がけています。「この一枚を見ればすべてがわかる」というような写真が撮れないものかと、まるで砂粒のなかから探し物の宝石のつぶを見つけるような思いでパソコンに向う日々です。

このブログでもたまに書かせていただいている「Peggy Baker Dance Projects」。本拠地がトロントのコンテンポラリーダンス・カンパニーで、主宰者はPeggy Bekerさん。たまたまCOCが行っていた無料コンサートに撮影の機会があり、日本人ダンサーとしてまたこのカンパニーのアーティスティック・アソシエイトとしての役割を担っているSahara Morimotoさんと出会ったことがきっかけで、折に触れて撮影させていただいてもう2年になります。

最初の撮影の時に全く思い通りに撮れないということはいつものことなのですが、ダンスを撮影するのは本当に難しいと感じています。その後撮影のチャンスが巡って来て、なぜかペギーさんが私の撮るものを気に入っていただいたということもあり、忙しいリハーサルの中ダンサーの皆さんにもご理解いただいてちょくちょく顔を出すようになったというのがいきさつと言ったところでしょうか。


カメラマンとしてリハーサルの撮影経験について書いて欲しいと依頼をうけて、珍しく自分で書いた英語で彼らのブログに投稿させてもらいましたが、自分の撮影の手続きのようなものについて考える良いきっかけになったかと思っています。
http://peggybakerdanceprojects.wordpress.com/2014/02/05/capturing-the-moments/

私にとっては未知の世界で、何とか撮れるようになりたいという思いと、撮らせてもらってそれが何かペギーさん達の役に立つのであればという考えだったのですが、ポスターやパンフレットという宣材利用にはかなり驚きました。この分野の皆さんは基本的にはアーティストであって、特にイメージが直感的に表現される写真については厳しい目が向けられます。この要求に応えるため、彼らを専門に撮影するダンス・フォトグラファーという方々がいるほどです。撮影機会が増えるたびに経験は増してくるのは実感できますが、それが一体どのレベルなのか、素人の私の写真で大丈夫だろうか? と思うのが偽らざる気持ちです。とは言え、趣味や遊びでというわけではないことも事実。撮影するからには、そういったレベルのものが求められているということを肌で感じた時期でもありました。

今回も同様に宣伝用のポストカード(最初の写真)に私の写真が使われることは予想をしていたのですが、公演5日前になってこれまで撮影したものの中から10点を選び、公演が行われる受付ホールで展示を行いたいという意向が突然伝えられた時にはさすがにこれは・・・と二の足を踏みました。「展示を行った経験もないし、そんな人間でもないのですが・・・」という気持ちを打ち消すような主宰者の願いがこもったメールを読み返し、一晩考えて「清水の舞台・・・」という決心で結局お引き受けをすることにしました。


3000枚は越えるかという写真の中からまずは私が候補となるものを選び、それを受けてペギーさんが最終決定となる10枚を選定。人生初の大判プリントを発注し、それを受け取り会場での準備へという流れをたった2日間で終わらせ、一昨日の晩になって設置が完了。昨晩はダンサーの皆さんの陰にひっそりと寄り添うようにして、私も人生初の「初日」を迎えることになったわけです。

一つだけ驚いたのは、ペギーさんが選んだ写真の中に1枚、私が最初に彼らに出会った時に撮った一枚が入っていたことでした。


これがその写真。「なんでこんなに撮れないのか・・・」とあの時は相当がっかりした記憶が未だにある中の一枚。あの感覚は私の単なる思い込みだったのか。。。一旦作品になってしまえば後は作者の手を離れて見るほうに解釈は委ねられることを理解はしていても、写真は奥が深いものだと感慨深くその写真が貼られている壁の前でため息をついてみたりしました。そしてカメラマンでも写真家でも、結局どっちでもいいものだとも思ったわけです。

最終リハーサルの写真は下記に置いてあります。本邦初公開の初演2本はリハーサルでは部分的に見ていたものの全体を見るのはこの日が初めて。Saharaさんの踊る「Sylvan Quartet」を撮るのは3度目かと思いますが全く違う舞台設定で、ペギーさんのソロ「Box, la femme au carton」は見るのがこの日初めて。ピアノで言うところの「初見」での撮影に加え、それぞれのパフォーマンスに対して適切なカメラ側の設定を瞬時に判断しなければならなかったので、3時間ほどの撮影が終わった時には、こんなに緊張したこともないと思うほど珍しいくらいに疲れ果てました。実際「本当にちゃんと撮れているのか」は家に帰りディスプレイで見てみるまでは分からないくらい難しい撮影でした。以下のリンクをご覧下さい。
http://www.flickr.com/photos/makoto2007/sets/72157642987875355/

そして昨晩は、満席となった客席の隅の方で初めて観客として公演を見ました。どうしても「あれが撮れてない」「この瞬間も撮るべきだった」というようなことばかりが先に立ってしまったのですが、ファインダー越しに見るものとはまた別の立場で自分の仕事を見直すことができて大変勉強になりました。そしてパンフレットの最初のページに「Marketing photography」というタイトルで私の名前を入れて下さったことに感謝しつつ、かなり身が引き締まる思いになったわけです。



公演は3月28日〜30日、4月2日〜6日までダウンタウンのBetty Oliphant Theatre(404 Jarvis St./カールトンの交差点から北へジャービスを数分歩くと左手にあります)で行われています。



コンテンポラリーダンスについてはほとんど素人の私が言うのも何ですが、どういうものかを見たことがないという方でしたら、ぜひ一度ご覧いただく機会を持ってもらえればと願っています。私も最初は「難しいんじゃないか」とかいろいろ先入観があったほうなのですが、「百聞は一見に如かず」、です。
今年は5月にAGOでのユニークな公演も控えていますので、日程的に今回が難しいようでしたら、機会を見て足をお運びいただければと思います。

公演の詳細は:
http://peggybakerdance.com/upcoming

チケットは:
http://www.brownpapertickets.com/event/515859

また、3月30日のトロントスター紙日曜版に、素晴らしい評価が掲載されています。あわせてご覧下さい。



http://www.thestar.com/entertainment/stage/2014/03/29/peggy_bakers_heshe_review.html