トロント(カナダ)在住20年の筆者が、カナダ国内旅行やトロント市内を中心としたイベントで撮影した写真で綴るブログです。
自己紹介はこちら

2013年9月8日日曜日

秋色ユーコンのハイライト「ツンドラ紅葉」を見てきました!

20130903_181048
ユーコン準州北部の秋のハイライトの一つ、「ツンドラ紅葉」。8月末〜9月初旬というきわめて短い期間に現れ、始まると瞬く間に色づき、1週間ほどで終了します。紅葉はどこでもそうですが、一番良いピーク時期を予測するのが難しく、旅行者にはなかなか時期を見極めずらいもの。「ツンドラ紅葉」は特に時期が短く難易度の高いと感じますが、ここはカナダの秋旅では知る人ぞ知る名所として知られているのも事実です。

20130903_174841
私たち一行がこの秋色ユーコンを目指し、紅葉の名所「トゥームストーン準州立公園」に向ったのは9月3日のこと。日程は昨年のピーク時期をもとに事前予測で決められたのですが、現地に入ると今年は1週間ほど紅葉のスタートが遅く本来の姿は見られないという情報も。ドーソン・シティー出発時にはあいにくの雨。北極圏へ向う「デンプスター・ハイウエイ」を通り祈るような気持ちで現地向かいましたが、ビジターセンターに到着するも荒れ模様のお天気でした。上の写真は最初の絶景ポイントに向う途中で、霧の中を進んでいる所。このあと霧が引いて、最初の写真風景が目の前に広がるというマジックのような瞬間の連続でした。

今回のツアーではアークティック・レンジ・アドベンチャー(http://www.arcticrange.com/ja)の日本人スタッフ上村さんがつきっきりで付いて下さり、終始変わりやすい天候の中経験と情報収集の高さで何度も私たちをその時々の最善の場所へと導いてくれました。彼は大変経験が豊富で、この日も的確な状況判断で最初の写真を見事に撮影することができました。

20130903_185334
撮っている本人が言うのもなんですが、「写真に納まりきらない風景」というのはまさにこのことを言うのだと思えるくらいに雄大で、しかも赤や緑、黄色といったカラフルで幻想的な風景が目の前に現れた時には、本当にビックリしてしまいました。トロントに住んで17年、まだまだ見ぬ美しい風景がたくさんあるのだと、あらためてカナダの雄大さにため息も。上村さんによると、事前の予測に反して紅葉のピーク時に入ったとのこと。本当に幸運でした。

20130903_202215
公園内をマイクロバスで移動しながら、最後はツンドラ紅葉の丘をのぼるハイキングにも挑戦。ふわふわの分厚い絨毯の上を歩いている感覚は、まるで雲の上。ふわふわの原因は「ツンドラ」というこの地域特有の気候によるものだと聞き、少し調べてみました。


まずは位置関係については地図をご覧下さい。今回の旅の起点はホワイトホースですが、ツンドラ紅葉を見るためには560キロ先のドーソン・シティーまで行く必要があります。ホワイトホースからドーソン・シティーまでは陸路(クロンダイク・ハイウエー)か飛行機で行くという選択肢があります。
実際に「ツンドラ」という気候や地質を体験できるのは、クロンダイク・ハイウエーを行くルート。ロシア地方の言葉で「木のない土地」に由来する言葉から取られた名前の由来通り、ハイウエイ沿いの風景が次第に森が低木や湿地帯へと変わることで北緯60度より上の地域に特有の「ツンドラ地帯」に入ったことが体感できます。
夏が短く冬が長い寒冷地では大地は凍結しますが、地中深くには「永久凍土」といって永遠に凍ったままの地層が残ります。春になり気温が上がると、活動層と呼ばれる表層だけが融解と凍結を繰り返し、そこに植物が生えるという仕組みになっています。
カナダでは"North of 60"(青い破線が北緯60度)といって、北部に位置する3つの州(ユーコン準州、ノースウエスト準州、ヌナブト準州)はその全体がツンドラ地帯に入るエリア。ちなみに日本本土の最北端、稚内市は北緯45度。ユーコン準州は日本の最北端よりさらに北に位置しているのですね。
ドーソンの街に入って気づくのは、道路が舗装されていないこと。地表付近が凍ったり溶けたりして舗装は無理なために、夏の時期の歩道は板張りのボードウォークを歩くようになっています。

20130903_194626
こうして書くと「ツンドラ地方」は木も生えない不毛の地という印象を受けますが、実際歩いてみるとそれは正反対。活動層と呼ばれる表面は、雪が溶け日中の気温が15度を超える5月中旬には土の氷も溶け、地表に這うようにして草、コケや低木が生える湿地帯が現れます。私たちが歩いた湿地帯は、正確にはふかふかの「コケの上」を歩いた、ということになるのでしょう。だからふわふわしていたのですね。場所によると足がずぼっと入ってしまうくらいの深さの場所もあったりします。
北米ではカリブー(トナカイ)と呼ばれる動物が生息していますが、極寒を避けて南北に移動する時にツンドラ地帯に生えているこの草が彼らの貴重な食料源となっているそうです。

20130905_122743
20130905_123850
古き良き時代には、この付近には数えきれないほどのカリブーの大群が通過していていました。乱獲により生息数が激減し、今はそのような姿は見ることができないそうですが、付近には「Caribou Crossing(カリブー・クロッシング)」という街が今もあります。ただ、類似する街が北米に何カ所かあるため郵便が間違って届くなど生活に支障が起きるようになり、ユーコンのそれは現在は「Carcross(カー・クロス)」という名前に変わり、先住民族の歴史と伝統文化を伝えるトーテムポール工房がある観光地となっています。別な日にこの街を訪れた際には、日本でも展覧会を行ったことがあるキース(Keith Wolfe Smarch)さん(写真上)が息子さん(写真下)とともに現在制作しているトーテムポールについて、説明を受ける機会がありました。

R9248488
このカークロスという街は面白くて、街の近くには「世界一小さい砂漠」と呼ばれる場所があります。正確にはここは砂漠ではないらしいのですが、風の通り道になっているために草木が育たず、荒涼とした砂漠のような風景を作り出しているのだそうです。

20130903_183416
「ツンドラ紅葉」に話を戻します。上の写真をよく見ると、背の高い木は生えていませんね。低木や草が一面を覆い尽くしているからです。この美しい紅葉風景の正体は、夏になると永久凍土の上に現れる表層の植物が秋の到来とともに色づくことによって作り出されているわけです。草原と山肌をキャンバスに見立てると、まるで絵筆で描いた油絵のような特徴的な風景が見られるのは、まさに地表近くにある植物が一面に色づくことによるからだと、独特の風景の仕組みに納得です。

20130903_154307
遠景はもちろん美しいのですが、足元の風景もなかなかのもの。ここに来たら遠近両用の自然美を楽しみたいものです。

ユーコンの短い秋が終わると湿地帯は厚い雪に覆われ、長い冬が終わり夏の到来とともに再び地上に姿を現すということを繰り返します。というと当たり前に聞こえますが、寒い時にはマイナス50度にもなる極地的な厳しい気候の中で育つ植物の生命力にはただただ脱帽。私はコケの足を取られて膝をひねるは、湿地の水たまりに足を突っ込んで靴がびしょびしょになるわ、日頃の運動不足がそのまましっかり出るという生命力の弱さを遺憾なく発揮してしまった次第です。

20130903_193021_01
ハイキング中に、この地域に住むライチョウに出会うこともできました。足が太くてしっかりしているのは、ふわふわのコケの上を素早く移動するためなのかな? とも思い、次回にユーコンを訪れるまでにはライチョウのような足に鍛え直したいと考えています。

R9248371
この日の写真もご覧下さい:
http://www.flickr.com/photos/makoto2007/sets/72157635379663728/