トロント(カナダ)在住20年の筆者が、カナダ国内旅行やトロント市内を中心としたイベントで撮影した写真で綴るブログです。
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2013年9月24日火曜日

ユーコン・グルメについて考える

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ユーコン秋旅の第4回目(ぢゃなくて、ちゃんと数えたら6回目でした)。今回はタイトルにあるように、ツアー中に経験したユーコンでのお食事について書いてみたいと思います。
どこに行っても、間違いなく食事は旅の楽しみの一つ。ホワイトホースとドーソン・シティーではどんな料理があるのかと出発前にユーコン・グルメの情報をネットで調べてもなかなかつかみどころがなく、どういった感じの料理が出てくるのか、なかなか情報を見つけることはできませんでした。
今でも思い出すのが、「何を見るか、どこに泊まるか、何を食べるか」この3つが旅行を印象深いものにする大事な要素だと言われたこと。最近では良い意味でのサプライズとして「自分が主人公になって、関われること」を加える傾向性がでてきていますが、食事は依然として大事な要素。ユーコンでどんなグルメに出会えるのか、不安と期待が半分半分で現地に向いました。

まずはホワイトホース

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予備知識がほとんどない中で現地に入り、ランチの時に聞いたのが「ユーコンはアラスカに近いため、シーフードが美味しい」。見渡す限りの山を飛行機から見てきた直後だったので、ちょっと「あれ?」と拍子抜けしたことを覚えています。最初にチェックインしたホテル「Coast High Country Inn」のレストランではメニューに迷い、昔友人に教えてもらった「北米でメニューに困ったらFish&Chipsを選ぶこと」というアドバイスに従うことに。

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ちょうど「ロックフィッシュ」を使ったFish&Chipsがあったので、これをチョイス。ちなみにロックフィッシュとはこんなお魚。写真はB.C.産(Taro's Fish)ですが、特に「アラスカ産ロックフィッシュ(Alaskan Rock Fish)」と言えば、この7月に200歳にもなろうかという巨大な魚がかかったとニュースにもなっていました。赤みがかったオレンジ色の魚はオコゼに似て見た目は悪いのですが、煮付けにすると旨い魚です。

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意外や意外、シーフード・デビューから始まった「ユーコン・グルメ旅」。ディナーで入ったレストランは、地元でも人気の「Burnt Toast Cafe(http://burnttoastcafe.ca/)」。カフェと名乗っていますが、メニューを見るとビストロ風。「Tapas=タパス」と呼ばれる一品料理がバラエティーに富んでいて、ワインを飲みながらゆっくり食事を楽しみたい感じです(でも午後9時がラストオーダー)。そして再びのシーフード。なかなかお目にかかれない「アークティック・チャー」という魚がシーフードのメニューに載っていることを発見。ならばと白ワインのグラスを肴に試してみることにしました。

こちらに住んでいると、たまに食材についての知識が豊富な人とレストランで居合わせることがあります。そういう人は、レストランの常連さんと決まっています。そして彼らはメニューのシーフード・リストに目を光らせているわけです。「今日のオススメは何?」「魚はどんなのが入ってる?」という質問をサーバー・スタッフに浴びせている光景を良く目にします。旬の魚の場合、グリルで焼いて旨い魚、煮て旨い魚、蒸して旨い魚と様々。サーバーに尋ねて帰ってくる答えがわかる、それが常連の特権でもありまた、そんなうるさ方の客を集めるレストランは、実力のあるシェフがいると決まっています。
海がないトロント。魚の入荷はイーストコーストで週末にとれたフレッシュなものが週明けに陸送されてきます。シェフは週が明けると出入りの魚屋からの入荷状況を得て、スペシャルを決めます。安定して入荷する養殖ものは別として、「旬の魚」はその時々で変わるわけです。加えて、ポルトガル沖や地中海からの魚もフレッシュな状態で空輸されて来ます。ユーコンの場合は、ウエストコーストから魚は供給されているのでしょう。食料輸送のノウハウは近年飛躍的に上がっていますので、海から遠いからおいしいシーフードが食べられないかというと、そうでもないのです。
豊富な食材に恵まれたカナダのレストラン・シェフ達のキャリアのスタートは、肉料理をしっかり覚えるところから。カットの仕方から部位別の料理法など、修行時代に叩き込まれます。さらに難易度が高いのは魚の処理。レストランにもよりますが、旬の魚を出すレストランにとってシーフードメニューはシェフの腕の見せ所。おいしいレストランは、魚の骨で取った出汁でスープを作るほど徹底しているほどです。

そして彼らは料理にあう旨い酒や、フレッシュな食材を誰が持っているかということを良く知っています。レストラン・シェフにとってのキャリアは、一枚のお皿に料理が乗るまでのすべての過程を知り尽くして初めて一人前と認められる、ということなのでしょう。

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白身の魚でメニューに見かけるのは、スズキの仲間ヨーロピアン・バス(トロントのシェフは“branzini=ブランズィーニ”とイタリア風に呼ぶ)や舌平目(Dover sole=ドーバー・ソール)、こぶりな黒鯛(Seabream=シーブリーム)やスズキの仲間イエロー・パーチ(Perch)、エリー湖でとれるピッコロ(Pickerel)などに加えて、クエに似たグルーパー(Grouper)、巨大なヒラメのような形をしたハリバット(Halibut)、オーシャン・トラウト(Ocean Trout)などなど数え上げたらきりがありません。なかでも「アークティック・チャー」は別格。トロントのレストランでもなかなかお目にかかることがない高級魚です。

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この魚、日本語では「北極イワナ」と呼んでいるようですが、正確にはサーモンの仲間。ワイルド(野生)と養殖とがあります。生息地はカナダでは北極圏、イギリス、アイスランドなどの川や湖(氷河湖)となっていて、特に冷たくてきれいな水にしか生息しないことで知られています。見た目も養殖ものは上の写真のようになんとゴールド! さばくと赤みがかったピンク色の身が出てきます。

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人気の理由は何と言っても、食品としてバランスが取れていること。プロテイン、ナイアシン(ビタミンB3)、チアミン(ビタミンB1)、ω-3脂肪酸など良質な栄養素が豊富。こうしたことから、カナダでは特に健康志向の強いグルメな人々に根強いファンがいるわけです。
これまでの人生で、一度だけ食べたことがあります。今から4年ほど前、トロントの魚屋さん「Taro's Fish」でウエブサイトを作るというので写真を撮る目的で通っている時期がありました。気がついたらレストランに魚の配達をするまでに出世(?)したのですが、店に出ている旬の魚を買って帰り料理して食べたりしていました。この手の魚を刺身で、という場合はまず急速冷凍して解凍したもの使用しますが、冷凍を施すとやはり水っぽくなってしまいます。生の状態がとても良いものは「キュアード」ができます。キュアードすると濃厚な味わいが増すアークティック・チャーですが、フライパンで皮目からパリパリに焼いて行くとまた違った表情の野趣溢れる味わいが魅力です。ただしキュアードは、見た目以上に魚の情報が分からないとできないことなのでめったにはできません。参考までに興味のある方はこちらをどうぞ。
しかしこの魚と4年後に、ユーコンで再会するとは思いませんでした。

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この日のメニューは「アークティック・チャーの紙包み焼き」(Arctic Char en Papillote)。このブログの最初の写真がそれです。ローカルでとれたワイルド(野生)のアークティック・チャーのフィレにレモンとハーブを添え、パーチメント・ペーパーでくるんでオーブンに入れ、包み蒸し焼きにしたものがでてきました。(lemon herb crusted local Icy Waters char steamed in parchment paper served with blue cheese mashed or rice and a fresh daily vegetable $20」。

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ピンクがかった身の風味はサーモンに似ていて、こちらで良くお目にかかるトラウトという川魚に近いものがあります。「紙包み焼き」という凝った料理方法はさっぱりとした白身魚だと良く使われますが、サーモンなど独特の香りが出る食材はタマネギのスライスやキノコ類を敷いて白ワインを加えるなど工夫が必要です。
興味津々、包みを開けるとレモンの輪切りが盛大に載っていましたが、じっくり時間をかけて上手に料理してあり、柔らかに仕上げられた身をフォークですくうと独特な香りもほとんど気にならず、あっさりとした味わいが引き立ちます。よっぽど食材がフレッシュなのでしょう。プレゼンテーションも工夫がこらしてあり、こぢんまりとしたビストロ風なお店の雰囲気とピッタリ。とてもおいしくいただきました。

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ドーソン・シティーでのツアーが終わり、再びホワイトホースに戻って来た日に宿泊した「Sundog Retreat(http://www.sundogretreat.com/)」。ホテルを点々と移動し、この日は広い敷地内に山小屋風のログ・キャビンが点在するユニークな施設に宿泊でした。ここではキャビン内のキッチンで食事をつくるという設定でしたが、グループでの宿泊のため「ケータリング・ディナー」となりました。蓋を開けてみると、オーナーご夫妻とスタッフが用意した手作りのお食事がテーブルにずらり。ケータリングというより「バイキング料理(カナダではバッフェ)」、手作りとはいえかなり豪華でした。見てみると、シーフードはアークティック・チャーでしたので、再びこれをチョイス。 R9248468
ワインと一緒にとてもおいしくいただき、〆はルバーブのアイスクリーム乗せまでいただいちゃいました。

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そして最終日に向ったのは、ダウンタウンの「Antoinette's」。お洒落な店内は、真っ赤な壁にかかった現代風の絵画が印象的で、お料理はトロントで言う所のカルチャー・ミックス、フュージョン料理。最後のディナーはリブ・アイ(牛肉)のステーキにユーコン・ビール。グリル野菜もたっぷり入っていて、お腹いっぱいになりました。

そしてドーソン・シティーへ

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ホワイトホースでは魚を食べたので、ドーソン・シティーでは肉料理を中心に選んでみました。
ほぼ1日かけてホワイトホースからドーソン・シティーに到着した最初の晩に訪れた「Klondike Kates(http://klondikekates.ca/)」。ここは山小屋風のキャビンと呼ばれる宿泊施設に併設されているレストランで、私たちが到着した時には40名ほどが入れるこぢんまりとした店内は満員盛況でした。

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メニューを見ると、エルク(鹿)とバイソン(野牛)を使った料理がメニューにのぼっていました。これらはゲームミート(野生のものを狩猟で捕ったもの)ではなく食用として育てられているもので、ユーコンに来たらぜひ食べておくべき肉料理というすすめがありましたので注文してみました。ちなみにバイソンはやはりこの地域にのみ生息する牛の仲間。実物はかなり迫力があります。
トロントのスーパーに行くと牛肉のコーナーには必ず「Regular」と「Lean」の2種類があって、「Lean」の方は脂肪が少ない赤身中心の肉を指して、健康的な食材として人気があります。バイソンは牛肉より脂肪やコレステロールが低いということで注目されているようですが、まだまだ手軽に食べるというところまでは普及していないようです。
この日試したのはバイソンのソーセージ。地元ユーコン産ビールとピッタリでした。どちらかというと脂身が少なく、口に入れるとしっかりとした感じがあって、付け合わせのサラダについてきたソースをたっぷりつけて食べてしまいました。

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別な日に訪れたレストラン「Belinda's at Westmark Dawson」では、エルクのシチューがあるというので楽しみにしていたのですがちょうど売り切れてしまい、再びバイソンに戻ってミート・パスタに変更。ソースにからめると食べやすいという印象がありました。

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もう1回のディナーは、「Drunken Goat Taberna(http://www.drunkengoattaverna.com/)」。ギリシャ料理店専門店で、トロントでも良く見かけるものです。

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この時はラム肉のスブラキを注文。上手にラムを料理するためには、丁寧な仕事が大事。ミディアム・レアに焼き上がったラムはかなりボリュームがありましたが、生野菜とあわせてしっかりといただきました(ユーコン・ビールも)。特にツアー中は移動が中心。忙しいスケジュールのなか、食事の時にしっかり野菜を取ることは体調管理にもつながります。

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唯一の心残りは、エルクのシチューが売り切れだったこと。あれは絶対に美味しいという予感が・・・あらためて写真を見返していたら、最初に訪れたホテルのレストランで見た上のメニューが。
伝統的なメイン料理として書かれているものが、大いに参考になります。