トロント(カナダ)在住20年の筆者が、カナダ国内旅行やトロント市内を中心としたイベントで撮影した写真で綴るブログです。
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2013年5月30日木曜日

VIA鉄道「カナディアン号」(2)パークカーと展望車を楽しむ

VIA RAIL / VANCOUVER TO JASPER

MEETING BEAUTIFUL PEOPLE FROM THE WORLD - NIGHT AND DAY AT PARK CAR
バンクーバーとトロントを結ぶ大陸横断鉄道「カナディアン号」には、長時間の旅でも退屈しないように施設が工夫されています。その一つがパークカーと呼ばれる列車最後尾の車両。
外から見ると流線型の美しい形をしていて、中に入ると半分がラウンジ、半分が展望ドームのある2階部分とその下にはミニバーとカードゲーム等ができるボックスシートがあります。

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VIA RAIL / SLEEPER PLUS
VIA RAIL / SLEEPER PLUS

一番人気は、展望ドームのある2階席。360度が見渡せるとあって特にバンクーバーからジャスパーまでの区間は人が絶えることがありません。

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夕闇迫る湖畔を走るVIA鉄道。こんな風景をのんびりと眺めるのも、鉄道の旅ならでは。

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夜になると足下の通路だけに照明がついた暗闇の室内から、月に照らされた草原を一人静かに眺めるのも乙なものです。信号機に照らされた車体の屋根が妖しく光ります。夜になるとパークカーに人影がなくなりますので、こうやっていくらでも車窓を眺めていられます。

VIA RAIL / VANCOUVER TO JASPER

「カナディアン号」の車列構成は、先頭を走る機関車2両(あるいは3両)に始まり荷物車1両、コーチ(エコノミークラス)2両、展望車1両、食堂車「A」1両、展望車1両、寝台車(スリーパークラス)8両、展望車1両、食堂車「B」1両、寝台車(スリーパークラス)3両、最後尾にパークカー1両。最後尾から先頭の機関車まで歩くと、約10分かかります。
車列の中に4両ある展望車は2種類で、2階に階段で展望ドームに上がるものと、通路を隔てて2+2の座席があり車両の上半分が全面ガラス窓になっているタイプがあります。左右の雄大な風景を一望にできる全面ガラス窓の車両も見晴らしは良かったのですが、22両編成の「カナディアン号」の雄姿を最後尾から見ることができるパークカーからの景色は、個人的に最もお気に入りの車両でした。ちなみに車両の写真はすべてパークカーの展望室から撮影したものです。

VIA RAIL / VANCOUVER TO JASPER

上を走るのは貨物列車。そして下は私が乗っているVIA鉄道。最後尾のパークカーから見ると、先頭はずーっと先です。

VIA RAIL / VANCOUVER TO JASPER
VIA RAIL / VANCOUVER TO JASPER
VIA RAIL / VANCOUVER TO JASPER

バンクーバーを夜に出発し早朝には山肌に沿って蛇行しながら先頭の機関車の姿を、そしてランチが終わりしばらくすると徐々に現れる山脈の姿を横目に、森の中をくぐり抜けるようにしてカナディアン・ロッキーの最高峰「ロブソン山」に向かって進む「カナディアン号」の車列は感動的です。展望席は限られているので、特に最前列の眺めの良い席を長い時間占領しないよう配慮したいものですが、正直席を離れがたいというのも心情ですね。

VIA RAIL / SLEEPER PLUS

乗り込んだ初日の夜は、出発するとまもなく最後尾のパーク・カーで「ウエルカム・シャンペン」が振る舞われ、座席に帰ったら寝台になっていました。翌日はバンクーバーからジャスパーまでは特に景色がきれいだったのでずっとパークカーのラウンジと展望車にいて、ジャスパーに着く寸前まで座席にいることはありませんでした。

VIA RAIL / SLEEPER PLUS

階下は車両の壁に沿うように座席が並べられたラウンジとなっていて、どちらかというとソーシャルな場になっています。

VIA RAIL / SLEEPER PLUS

入り口付近のテーブルには、お水、ジュース、コーヒー、紅茶とクロワッサンやマフィンなどが置かれています。ラウンジの手前にはミニバーがあり、アルコールやコーラ等を買うことができます。ここは夜の11時にはだいたい営業を終了するようですので、例えば部屋でゆっくりウイスキーでも飲みたいと思ったら早めに行ってカップに氷を入れてもらって(これは無料)部屋に持って行くのもいいかもしれません。

VIA RAIL / SLEEPER PLUS
VIA RAIL / SLEEPER PLUS

あえて「営業が終了するようです」と曖昧に書いたのには理由があります。VIAに乗ると、時間の流れは普段とちょっと違って「〜するようです」的なものに変わって行きます。代表的なのは食堂車での時間。あらかじめ予約をするのですが、指定の時間には「7:30pm - ish」と最後に「イッシュ」という聞き慣れない言葉がつきます。「おそらく、だいたい」というような意味合いで、「この辺の時間を目標にしてます」という感じです。時間に正確な日本人としては「イッシュ」とは何ぞやと思うわけですが、VIAの時間はのんびり過ぎると考えておいた方が良いでしょう。


さてVIA鉄道のハイライトは展望車両からの眺めであることは間違いありませんが、もう一つはこのラウンジで過ごすひととき。世界各地から集まってくる乗客同士の交流は、鉄道の長旅を楽しむ醍醐味だということを知りました。

バンクーバー〜ジャスパー間は22時間、ジャスパー〜ウイニペグ間は26時間、ウイニペグ〜トロントは32時間と長旅です。座席や部屋にこもっているのにも限界があるので、皆さんちょこちょことラウンジに出てきます。おしゃべり好きで旅慣れたシニアの皆さんは、昼間から話題に事欠くことはなく、簡単な自己紹介の後に四方山話に花が咲くという具合です。もちろん皆さん初対面。会話は英語。私たち日本人にはこの辺がちょっと敷居が高いのですが、片言の英語でも「会話をしよう」という意思があれば何とかなるものです。名前と出身地(Japan)を言ったあとに、例えばなんでこの列車の旅をしているのか、といった何か会話のきっかけとなるような話題を出せば、自然と会話も始まります。私の場合、しゃべるとボロが出るので聞くことを楽しんで、会話に入れなければ「笑顔で」で席をたてば無問題。
話を聞いていると、特にイギリスとオーストラリアからの旅行者が多いと感じるのは偶然でしょうか? クルーズで世界を回りながらバンクーバーからVIA鉄道に乗り込んだという夫婦に何組にも出会いました。「どれだけお金持ちなんだろう」と思いながら話を聞いていると、宿泊するホテルはユースホステルやインのようなエコノミーな宿が中心。欧米の皆さんはどこにお金をかけるかというポリシーがしっかりしているようで、ちょっと安心しました。
それでもイギリスからオーストラリアを回ってバンクーバーまでクルーズ船で来たというご夫婦は、「さすがに54日間のクルーズの旅は長かった」と。「それならなぜ飛行機に乗らないのですか?」と聞くと、「飛行機はあまり好きではない」。「そもそも旅行はゆっくりするために行くので、せかせかしない方が楽しい」とも。「じゃあ予定とかはどうしているんですか?」とさらに尋ねると、「事前にあまり決めないで、その時々で現地の人に聞いて楽しむようにしているんですよ。特にレストランの情報は地元の人に聞くのがイチバン。安くて美味しいレストランを知っているのは、彼らですからね」と。なるほど・・・・
旅はコミュニケーション。初めて出会う人たちとの情報交換の中で、新しい発見があるという楽しみ方は、確かにクルーズとか横断鉄道の旅ならではと、先輩たちの話に感心しきりでした。

結局ロンドンから来たこのイギリスのご夫婦、香港〜日本〜韓国と回ってこの列車に乗ったトロント在住のご夫婦、そしてオーストラリアから来られたご夫婦とラウンジで意気投合、夜遅くまで四方山話に花が咲きました。会話の内容はたわいのない夫婦関係の話や、旅の思い出という軽い話題。失敗談などを披露しながら、ジョークを交えて楽しい時間を過ごすという感じでしょうか。「祖ですり合うも多少の縁」と言いますが、文化も言葉も違う国から偶然巡り会わせた人との縁がつながるラウンジという不思議な空間。景色だけではない列車の旅の醍醐味を味わうことができたのは、嬉しかったです。


お互い名前と出身地しかわからず、ひとたび列車から降りればそれぞれ別な道を行く「一期一会」の出会い。「おそらくこの方々とはもう二度と会わないだろう」と思っていたのですが、オーストラリアからのご夫婦とはジャスパーのツアー中に立ち寄った滝でばったり出会うというオマケまで。あまりの偶然に感動して、お願いして一枚だけ写真を撮らせていただきました。