トロント(カナダ)在住20年の筆者が、カナダ国内旅行やトロント市内を中心としたイベントで撮影した写真で綴るブログです。
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2012年11月29日木曜日

「Famous People Players」という劇団のこと

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昨晩はトロント観光局の関係で、トロントにある知的障害をもつ人々が劇団を結成して30年以上にわたりショーを行っている「Famous People Players」に撮影に行ってきました。撮影には特別な許可が必要でしたが、観光局の担当の方の計らいと、劇団の創立者のダイアンさんの好意で、実現したものです。

この劇団の名前を最初に聞いた時になぜか懐かしい思いがしたのが不思議で、ずっと考えていたのですが、会場について手渡された本を見て「あっ!」と思い出しました。私がカナダに来て最初に勤めた「ジャパン・コミュニケーションズ」という日系の会社の本棚の中にあって、「THROW YOUR HEART OVER THE FENCE」という英文の書籍が和訳されたことを社長さんから直接説明され、何度か手に取ったものでした。印刷は1998年とありますから、私がこの会社に勤め始める直前に完成したもののようです。

当時のトロントの印刷事情というのは、まだまだコンピュータ化がされていない時代で、ようやくワープロからパソコンへと移行する事に伴い、カナダでも本格的な日本語印刷ができる下準備ができた時だったと記憶しています。そんな中でこの会社の社長さんはかなり高価な投資をして、当時カナダで初の「モリサワ5書体」をライノに入れ、フィルムから日本語の版を起こして本格的な日本語印刷をトロントで実現させた、いわゆる先駆者だったわけです。当時この会社は本業の翻訳の他に実に様々なことを手広くやっていて、そんなことからこういう出版に関わることにもなったのだと想像します。

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1998-9年頃に縁があってこの会社にお世話になるのですが、英語もままならなかった当時の私が、電話番をしたり当時「アーツハウス」といってスパダイナとリッチモンドの交差点近くの製版会社に「トラブル対応」で送り込まれていたことを懐かしく思い出します。というのも、デザイナーは皆忙しいし、私は印刷に関しては全く役に立たない素人ですがパソコンにはちょっと詳しかった。それがちょうど良かったのでしょうか。。ちょとしたフォントのエラーが出ると一枚50ドルくらいだったか、結構なコストがかかるフィルムを出し直さなければならなかったのですね。さらにここでエラーを見逃すと、「フジプルーフ」といって、クライアントに見せるとっても高価な校正紙(一枚300ドルくらいしたと記憶していますが)も無駄にするという、恐ろしい状況だったわけです。それ以上に、常にギリギリの状態で進んだスケジュールでは一つのエラーも命取り。締め切りに間に合わないという悪夢が待っていた訳です。

そんなわけで、入社してしばらくすると、当時QuarkXpressで作られたデータの出力エラーが出ないように、また出てしまった時にすぐに直してその場でとにかく版を作れるデータに修復する、という今思うとなんでそんな事を素人の私がやっていたのだろうかと思うような事を、見よう見まねでできるようになってしまったわけです。

ページを開くと、今見てもしっかりと組まれた版とクリアなフォントが、どれだけの苦労があってトロントで実現したのかと思います。一番最後のページに「トロントで印刷、製本された」というひとことがなぜ書き加えられているのか、という意味を思う訳です。

20121128_214733 そんなことを思い出しながら、今はカメラマンとしてショーの撮影を終え、コーヒーを飲みながら担当の方と話す時間がありました。時の流れを思いながら、私は「30年以上毎日こうしたショーが続けられてきた、そのことが凄いと思います」という言葉を、思わず口にしました。

この劇団のレポートについては、トロント観光局のブログに書きましたので、そちらをご覧下さい。
いや、本当に懐かしい思い出です・・・そして、こんなに長い時間をかけてようやくここにたどり着くという奇遇に感謝。
http://www.torontotu-rizumu.jp/?p=761