トロント(カナダ)在住20年の筆者が、カナダ国内旅行やトロント市内を中心としたイベントで撮影した写真で綴るブログです。
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2012年1月11日水曜日

カナダ・オペラの歴史を学ぶ

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今日は「Four Seasons Centre for the Performing Arts」のフリー・コンサートに顔を出してきました。ここはカナダのバレエとオペラの殿堂として2006年に完成。以来オペラやバレエの公演のみならず、コンサートホールとしても使われています。なぜ行ったかというと、仕事をしながら聴いていたプッチーニのトゥーランドット、「Nessun Dorma(誰も寝てはならぬ)」が急に耳に入って来て、それ以来オペラのことが頭を離れないのですね。

実は高校時代にオーケストラに属していた私。音楽の先生が二期会の会員で、「オペラをタダで見せてあげるよ」と言っては某ホールの楽屋口からくねくね階段を上り下りして舞台がカーテン越しにばっちり見える場所に連れて行ってもらっていました・・・「あのね、帰り道わからないだろうから、終わるまで動かないでね」といわれ、「ラ・ボエーム」を始めから終わりまで立ちっぱなしで見た記憶があります・・・あの時に見た舞台装置の美しさ、歌手のきらびやかな衣装や言葉はわからないものの情感たっぷりに歌い上げられるアリアなど、だいぶ記憶は色あせてはいますが、今でも思い出す事ができます。そしてあれから30年以上もたってしまったことを考えると、時の流れの速さにはあらためてビックリします。そんなこんなで、カナダとオペラについて少しだけ調べてみました。


ルネッサンス(14世紀〜16世紀)と深い関係を持つ「オペラ」という音楽ジャンル。ギリシャ古典の再発見をうたったこのムーブメントは文学や芸術、科学などあらゆる分野に大きな影響を与えたことは説明するまでもありません。古代ギリシャで行われていた演劇が「詩学」の理論の中で発展しつつその一つの流れがオペラに着地した、というようなことを考えるとなかなか興味深いのですね。大学時代にちょっとだけ古代語を学んだりしたのですが、元来「歌」は人間の情念のほとばしり、身体の器官を通して発音される詩文の多くは音や節を伴っていたことを思い出しながら、音楽とことばが劇という形でオペラに昇華した出来事は歴史の必然であっとも考えられます。

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世界で最初のオペラが書かれたのは16世紀最後のイタリア、フィレンツェ。織物業と金融業の二本柱で膨大な富を蓄えたこの都市国家ではメディチ家が隆盛を誇り、パトロンとして芸術家達を積極的に育てていました。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなどの芸術家の名前はあまりにも有名ですね。貴族の楽しみであったオペラがやがて庶民にも親しめるようになり、18世紀になると技巧溢れる歌手の歌声が人気を博す中で、フランス、ドイツ、オーストリア、イギリス、アメリカでも盛んに上演されるようになりました。

カナダに海外からオペラ歌劇団が到着し始めるのは19世紀中頃になってから。遅れた理由はカナダが独自にオペラを行う財力がなかったり、経験や人材、施設がなかったことによります。もしカナダがイタリアの植民地だったら、、、とふと思ってしまいます。

歴史を辿ると1851年10月21日〜23日、当時伝説と呼ばれたスウェーデンのソプラノ歌手 Jenny Lind がトロントの「セントローレンス・ホール」で数曲のアリアを披露したという記録が残っています。ここを皮切りに1950年代に至るまでの100年間、トロントにはスペイン、アメリカ、ロシアなどのオペラ歌劇団が次々と訪れます。同時に、Emma Albani (1847-1930) などカナダ出身の歌手たちがヨーロッパに渡り、オペラ歌手として活躍します。この時代、すでにオペラは国際的だったのですね。ちなみに日本にオペラが紹介されたのは明治時代の1894年、カナダと時代的には重なるのですね。

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こうした経過の中でカナダのオペラは新しいステップを踏み出すことになります。1946年、トロント大学のオペラ部門として「Royal Conservatory Opera School」が設立されたことが、カナダ・オペラの中心的組織「Canadian Opera Company(COC)」の誕生のきっかけでした。1949年になると、「Hart House」や「Royal Alexandra Theatre」などで独自にオペラが演奏されるようになり、1950年2月には「Royal Alexandra Theatre」で初めてカナダ人によるオペラ・フェスティバルが開催されるまでになりました。この時上演された演目は「Don Giovanni」「Rigoletto」「La Boheme」。歌手をはじめ音楽監督、技術者等のスタッフは「Opera School」出身。カナダ人の手によるオペラ上演という悲願はこの時見事達成され、ここから目覚ましいCOCの活動が始まりました。

当初は秋のシーズンのみ、O'Keefe Centre(後に「The Sony Centre For The Performing Arts」と改名)をホームとして1961年から2006年まで公演が行われました。1977年には年間を通しての公演が行われるようになり、オーケストラもToronto Symphony Orchestra から自前のアンサンブルを持つに至りました。そして2006年に「Four Seasons Centre for the Performing Arts」がユニバーシティーとクイーンにオープン、現在に至ります。

Four Seasons Centre
前置きが非常に長くなってしまったのですが、フリーコンサートは毎週火曜日と木曜日(週によっては水曜日もある)に行われています。昨日のは中国舞踊でたっぷり1時間、なかなか本格的でした。10分前に行ったのですがすでに満員。座る場合は早めに行かれた方が良いでしょう。スケジュールは下記リンクから。COCのオペラプログラム等についてはまた今度。 (http://www.coc.ca/PerformancesAndTickets/FreeConcertSeries.aspx)